COLUMN — 撮影の承諾書

撮影の承諾書に何を書く?
社員が出る動画の同意書と退職後の扱い

2026.11.03 / 株式会社Atacama

「もし会社を辞めたら、この動画はどうなるんですか?」 採用動画への出演をお願いしたとき、社員の方が気にされるのは、たいていこの一点です。 撮影そのものより、自分の顔がどこまで、いつまで使われるのかが分からないことが不安なのです。

撮影の承諾書(同意書)は、この不安を撮影の前に解いておくための書類です。 書くことは、どの動画を、どこに、いつまで載せるか。そして退職したらどうするか。 この記事では、社員が出る採用動画や会社紹介動画を想定して、承諾書に入れたい項目と文例、いちばん迷いやすい退職後の扱いの決め方をご紹介します。

社員が出る動画にも、承諾書は必要?

必要です。顔や姿を勝手に撮られたり公開されたりしない権利(肖像権)は、法律の条文にはありませんが、最高裁の判例で認められています。 相手が自社の社員でも、この点は変わりません。 また、顔がわかる映像は、個人情報としても扱われます。

「就業規則や入社時の誓約書に、広報に使うことがあると書いてあるから大丈夫では?」と考える方もいらっしゃると思います。 こうした包括的な一文は、本人がどの動画が、どこに、いつまで載るのかを知らないままサインしているのがふつうです。 採用動画のように顔と名前が何年も残るものは、撮影の前に、その動画のための承諾書を1枚取っておくほうが確実です。

当社でも、出演される方とは撮影の前に必ず承諾書を交わしています。 出演をお願いする段階で中身を見てもらえば、何を引き受けるのかが本人にもはっきりして、返事がしやすくなります。 顔出しそのものへの抵抗感については、社員が顔出しを嫌がるときの始め方にまとめています。

承諾書には、何を書けばいい?

最低限、次の7つが書いてあれば、あとで「そんなつもりじゃなかった」と言われることはほとんどなくなります。

項目書くこと書き方の例
①どの動画か撮影日と、動画の目的2026年11月撮影の採用動画(社員インタビュー)
②どこに載せるか載せる場所をすべて採用サイト、YouTube、Instagram、TikTok、会社説明会での上映
③いつまでか公開する期間公開日から3年間。延長するときは改めて相談
④どう編集するか短く切り出す・広告に使う可能性ショート動画や30秒版への切り出し、Web広告での配信を含む
⑤名前の出し方フルネーム・下の名前だけ・出さない名字と入社年のみ表示
⑥退職したら退職後の扱い(次の節で詳しく)退職の申し出から1か月以内に非公開にする
⑦取り下げの相談先気が変わったときの連絡先人事部 ○○まで。相談のうえ対応する

見落とされやすいのは④です。 3分の会社紹介動画として撮ったものから、あとで15秒のショート動画を切り出して広告に流すことは、いまではよくある使い方です。 ところが、出演した本人は「採用サイトの動画」としか思っていないことがあります。 切り出しや広告への利用は、最初から書いておくのがおすすめです。

②の載せる場所は、「当社が運営するWebサイト・SNS等」とまとめて書くより、思いつく媒体を具体的に並べておくほうが親切です。 あとから新しいSNSを始めるときは、そのとき改めて一声かければ十分です。

いちばん揉めやすい「退職後の扱い」は、どう決める?

退職後の扱いは、承諾書の中でいちばん大事な項目です。 決め方は大きく3つあります。

決め方向いている動画気をつけること
退職したら非公開にする社員インタビュー、一日密着など、1人が主役の動画主役が辞めると動画ごと使えなくなる
期間を決めて、その後に見直す会社紹介動画など、数年使う予定の動画見直す時期を社内で覚えておく必要がある
退職後も残す(申し出があれば相談)大勢が少しずつ映る、イベントや社内の様子の動画主役級で映る人には向かない

当社がおすすめしているのは、1人が主役の動画は「退職したら非公開」、大勢が映る動画は「残す」という分け方です。 理由は、出演者のためだけではありません。 採用動画は、応募を考えている人に「入社したら、この人たちと働く」と思ってもらうためのものです。 動画で話していた先輩が、入社したらもういなかった。これは求職者にとって、小さくないがっかりになります。

実際、入社前のイメージと入社後の実態のずれは、多くの人が感じています。 学情が2026年6月に20代の転職サイト登録者に行った調査では、入社前後でギャップが「あった」と答えた人は8割を超えました (学情のプレスリリース)。 退職した人が出続けている動画は、このずれを会社の側から作ってしまいます。 主役が辞めたら非公開にして、新しい人で撮り直す。そのくらいの気持ちで運用すると、動画の中身もいつも今の会社に近いままです。

撮り直しの負担を軽くするなら、主役を1人に頼らない構成にしておく方法もあります。 たとえば社員インタビューを3人分撮っておけば、1人が辞めても、その人の場面を抜いて2人の動画として使い続けられます。 撮影の段階で「誰かが抜けても成り立つか」を考えておくと、承諾書の取り決めと動画の寿命がかみ合います。

映り込む人やお客様には、どうする?

一日密着の撮影では、主役以外の人もたくさん映ります。 後ろの席で仕事をしている同僚、打ち合わせの相手、現場のお客様などです。

社内の人については、撮影日を事前に全員へ知らせて、映りたくない人を先に聞いておくのがいちばん確実です。 聞いておけば、その人の席が映らない角度を選んだり、撮影の時間帯をずらしたりできます。 撮ってから「やっぱり映りたくない」と言われると、場面ごと使えなくなることもあります。 はっきり映る人には、主役と同じ承諾書をお願いします。

営業職の密着でお客様先に同行する場合は、事前にお客様へ撮影の協力をお願いし、どこまで映ってよいかを確認しておきます。 顔は映さず、手元や後ろ姿だけにする。社名や看板が映らないようにする。こうした条件は、口頭で済ませずにメールなど記録が残る形でやりとりしておくと安心です。 密着撮影の進め方は、一日密着の採用動画とはで詳しくご紹介しています。

学校行事や地域のイベントのように、未成年が映る撮影では、本人だけでなく保護者の承諾が必要です。 学校や主催者がすでに同意を取っていることも多いので、まずは確認してみてください。

AIでの加工は、承諾書に書くべき?

これから撮るなら、一行入れておくことをおすすめします。 いまは、撮った映像の背景を差し替えたり、話している言葉を別の言語に吹き替えたりすることが、AIで手軽にできるようになりました。 便利な一方で、本人の顔や声で、本人が言っていないことを話しているように見える映像も作れてしまいます。

承諾書には、たとえば「本人の顔や声をAIで作り変えて、発言していない内容を話させる使い方はしない」と書いておくと、出演する側の安心につながります。 背景の差し替えや字幕の自動作成のように、本人の発言を変えない加工まで禁じる必要はありません。 AIを使った映像づくりでできることは、実写×AIの動画制作でご紹介しています。

そのまま使える文例は?

ここまでの項目を、1枚の承諾書にまとめた例です。 会社の事情に合わせて、期間や載せる場所を書き換えて使ってください。

動画撮影・使用に関する承諾書

株式会社○○(以下「会社」)が制作する下記の動画に出演し、私の容姿・声・氏名を、下記の範囲で使用することを承諾します。

1. 動画: 2026年○月撮影の採用動画(社員インタビュー)
2. 使用する場所: 会社の採用サイト、YouTube、Instagram、TikTok、会社説明会・合同説明会での上映
3. 使用する期間: 公開日から3年間。延長する場合は、改めて本人に相談します
4. 編集: 短い動画への切り出し、Web広告での配信を含みます
5. 氏名の表示: 名字と入社年のみ
6. 退職した場合: 退職の申し出から1か月以内に、本人が主に映る動画を非公開にします
7. 加工: 本人の顔や声をAI等で作り変え、発言していない内容を話させる使い方はしません
8. 相談先: 使用について相談したいときは、人事部(担当: ○○)へ連絡してください

年 月 日  氏名(署名)

これは一般的な例です。 出演料を支払う場合や、社外の方に出演していただく場合などは、内容が変わることがあります。 不安なときは、顧問の弁護士や社労士の方に一度見てもらうと安心です。

費用はどのくらい?

当社に動画制作をご依頼いただく場合、承諾書の書式は当社でご用意しています。 上の項目をもとに、その動画の使い方に合わせて調整するので、別料金はかかりません。 映りたくない方がいる職場での撮り方や、主役が抜けても使い続けられる構成も、企画の段階から一緒に考えます。

動画の制作費は、撮影から30秒〜1分の動画を作るライトプランで20万円〜(税別)、3分前後の動画を作るスタンダードプランで35万円〜(税別)が目安です。 撮る本数や撮影の時間で変わりますので、ぜひ一度お問い合わせください。 費用の考え方は採用動画の費用相場にもまとめています。

よくある質問

Q. 就業規則や入社時の誓約書に書いてあれば、動画ごとの承諾書はいりませんか?
動画ごとに取るのがおすすめです。「会社の広報に写真を使うことがある」といった包括的な一文だけでは、どの動画を、どこに、いつまで載せるのかが本人に伝わっていません。採用動画のように顔と名前が長く残るものは、撮影の前に1枚の承諾書で確認しておくほうが、本人も会社も安心できます。

Q. 退職した社員から、動画を消してほしいと言われたらどうすればいいですか?
まずは承諾書で決めた扱いを確認します。そのうえで、本人が望まない形で使い続けることはトラブルのもとになるので、非公開にする、出ている場面を差し替える、といった対応を前向きに相談するのが基本です。撮影の時点で退職後の扱いを決めておくと、こうした場面で迷わずに済みます。

Q. 口頭で了解をもらうだけでも大丈夫ですか?
口頭でも了解は了解ですが、何年か経つと、どこまで了解したのかを本人も会社も思い出せなくなります。動画は長く残るものなので、紙でも電子署名でもよいので、内容を書いたものに本人のサインをもらっておくことをおすすめします。

まとめ: いま公開している動画の「出演者一覧」を作ってみる

これから撮る動画は、この記事の7項目で承諾書を作れば大丈夫です。 気になるのは、すでに公開している動画のほうかもしれません。 今日できることを一つだけ挙げるなら、自社のサイトやSNSに載っている動画を開いて、出ている人の名前を一覧にしてみることです。 その中に、もう退職した人や、承諾書をもらった覚えのない人がいないか。そこを確かめるところから始めてみてください。

文: 株式会社Atacama 代表取締役 阪口直哉(採用プラットフォーム出身。マーケティング・営業を経て映像制作へ)

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