COLUMN — AI×動画制作
DaVinci Resolve×Claudeで
動画編集を自動化。
任せた作業と残した作業
2026.10.10 / 株式会社Atacama
AIで動画編集ができることは、もう多くの方がご存じだと思います。 それでも実際に使われていないのは、ツール同士をつなぐのが面倒だからではないでしょうか。 文字起こしはこのアプリ、カットは編集ソフト、音量はまた別のツール。結局、人が間に入ってファイルを運ぶことになります。
2026年9月、映像編集ソフトのDaVinci Resolveが、ClaudeなどのAIアシスタントと直接つながるようになりました。 当社ではこれを使い、39分の対談の素材を「文字起こし→カットの判断→タイムラインの組み立て→音量合わせ」まで一続きで編集しています。 この記事では、そこでAIに任せた作業と、人が残した作業、そしてつまずいたところを、実務の目線でまとめます。 少し専門的な話も入りますが、なるべく平易に書きます。
DaVinci Resolve 21.1で、何が変わった?
いちばん大きいのは、MCPサーバーが内蔵されたことです。 MCP(Model Context Protocol)は、AIが外部のソフトを操作するための共通のつなぎ方です。 Blackmagic DesignのDaVinci Resolve 21.1のリリースノート(2026年9月8日)には、 「AIアシスタントと連携するためのMCPサーバー」が新機能として載っています。 発表では、Claude、Claude Code、ChatGPT Codexに対応すると案内されています。
つまり、「このタイムラインの音量をそろえて」「この素材を読み込んで新しいタイムラインを作って」と文章で頼むと、AIがResolveの中で実際に作業できるということです。 当社ではいま、Resolve Studio 21.1.1で、公式のMCPと、自分たちで作った編集用の道具を組み合わせて使っています。
導入でひとつ引っかかったのが、許可の設定です。 Resolveのメニューの「ファイル」→「Setup AI Assistants」で、使うAI(当社はClaude Code)を許可しないと、 外からクリップの情報を読もうとしても空の答えしか返ってきません。 エラーが出るわけではないので、最初は原因が分かりませんでした。つながらないときは、まずここを見てください。
実際に、何と何をつないだ?
題材は、当社で収録している対談番組の第1回です。 カメラ1台とマイク2本で、約39分。これを「動画と音声を入れたら、すぐ編集が始まる状態」にするのが目標でした。 流れは次のとおりです。
まず、マイク2本の音声から文字起こしをします。文字起こしにはWhisper系の音声認識を手元のMacで動かしていて、39分の素材で約15分かかりました。 同時に、5秒以上の無音と、どちらのマイクの人が話しているかを機械的に割り出します。 次に、Claudeが文字起こしを最初から最後まで読んで、切る場所を決めます。 最後に、その判断をもとに、Resolveの中に新しいタイムラインを組み立てます。元のタイムラインには手を触れません。
第1回で切ったのは、冒頭の87秒(収録前のカメラとマイクの相談)と、途中の13秒ほど(マイクの位置の相談)でした。 5秒以上の無音は、この回は1つもありませんでした。 「無音を切れば短くなる」と考えがちですが、少なくともこの回は、無音より「本番ではない会話」のほうが多くありました。 ここを見分けられるのが、文章を読めるAIを間に入れた意味だと感じています。
AIに任せた作業、人が残した作業は?
分け方の基準は、「正解が決まっている作業は機械、文脈で判断する作業はClaude、見た目と聴き心地の最終判断は人」です。
| 作業 | 担当 | 理由 |
|---|---|---|
| 文字起こし・無音の検出・話者の判定 | 機械(スクリプト) | やることが決まっていて、数字で答えが出る |
| 不要な会話の判断 | Claude | 「一旦止めましょう」「もう一回いいですか」は、文脈を読まないと見分けられない |
| 聞き間違いの修正 | Claude | 「ポッドキャスト」が「ホットキャスト」になる等。置き換え表を作って一括で直す |
| タイムラインの組み立て・書き出し | Resolve(MCP経由) | 元を残したまま、カット済みの新しいタイムラインを作れる |
| テロップの見た目・間・最終の聴き心地 | 人 | 細かい調整はAPIでは届かず、良し悪しも人の耳と目で決める |
ちなみに、現時点でAPIからできなかったのは、ステレオとモノラルの切り替えや、テロップ・トランジション・エフェクトの細かい調整です。 これらは今も画面で操作しています。 AIが全部やってくれる、という段階ではありません。 ただ、「素材を見返して、切る場所を探す」という一番時間のかかる作業から手が離れるだけで、編集の重さはかなり変わります。
やってみて、どこでつまずいた?
いちばん反省しているのは、音です。 完成版を聴いたら、ところどころ音が割れていました。 調べると、元の録音は割れていませんでした(最大でも-11dBFSほどで、余裕がありました)。 割れの原因は、こちらが自動でかけた音の処理でした。 声の大きさをそろえるために強めの圧縮をかけた結果、一瞬だけ音がつぶれていたのです。
対談の番組は、音が命です。そこで、処理前と処理後の音を20ミリ秒ずつ比べて、割れた箇所を全編から探す検査を作りました。 処理の設定を作り直し、割れがゼロになるまで確かめてから仕上げています。 最終的な音量は-16.7LUFS(LUFSは、人の耳の感じ方に近い音量の単位)で、オープニングと会話の音量差は1dB以内にそろえました。 ポッドキャストの音量は、Apple Podcastsが-16LKFS±1dB(LUFSと同じ尺度)を推奨しているので、それに合わせています。
ほかに踏んだものを、表にしておきます。同じことをやる方の参考になればうれしいです。
| 起きたこと | 原因 | いまの対処 |
|---|---|---|
| 字幕ファイル(SRT)を入れたらResolveが落ちた | APIで字幕トラックに流し込もうとした | テロップは仕上げの段階で重ねる。プロジェクトは自動保存で無事だった |
| 静止画が5秒で切れる | APIで置くと尺が5秒に固定される | 同じ画像から、尺ぴったりの動画を作って置き直す |
| 置いたはずのクリップが消えていた | 置いたあとに確認していなかった | 置いたら必ずトラックを読み直して、存在を確かめる |
| 書き出しが途中で止まる | 同時に別の書き出しを動かしていた | Resolveの書き出し中は、ほかの動画処理を動かさない |
| 音量の設定が効かない | 21.1でクリップ設定の書き方が変わった | 新しい書き方(まとめて設定する方式)に直した |
どれも、エラーが出ずに「なんとなくおかしい」で済んでしまう種類の失敗です。 AIに作業させるときほど、終わったあとに中身を読み直す手順を入れておくことが大事だと感じています。 オープニングの文字アニメーションは、別に作ったものを透明部分つきの形式(ProRes 4444)で書き出し、映像の上に重ねています。
社員の顔や声、社内の話をAIに渡しても大丈夫?
企業の動画では、ここがいちばん気になるところだと思います。 当社では、文字起こしを手元のMacで行い、AIに渡すのは文字のデータだけにしています。 映像や音声そのものを外のサービスに送らずに済むので、社員の顔や声の扱いで悩む場面が減ります。
文字のデータでも、社外秘の話が入っていることはあります。 使うAIサービスの契約によって、データの扱いが違う点には注意してください。 たとえばAnthropicは、法人向けの契約(Claude for WorkやAPI)では、会話をモデルの学習に使わないと案内しています。 個人向けのプランは、設定によって扱いが変わります(2026年10月時点)。 規約は変わるものなので、導入するときに一度、自社の使い方と照らし合わせてみてください。
出演する社員の方には、「編集の途中でAIを使うこと」も含めて、撮影前に説明しておくと安心です。 顔そのものをAIで加工する場合の考え方は、実写×AIの動画制作にまとめています。 AIで作ったBGMを使う場合の注意は、動画のBGMと著作権をご覧ください。
採用や広報の動画では、どこから使える?
効果が出やすいのは、長く回した素材から、使う部分を選ぶ作業です。 社員インタビュー、座談会、社長の話のように、撮影時間に対して使う時間が短い素材ほど、文字起こしと「切る場所の候補出し」をAIに任せる意味があります。 自動の文字起こしは社名や業界用語を間違えやすいので、固有名詞のリストを先に用意しておくのがコツです。 テロップづくりの注意はインタビュー動画の編集で詳しく書いています。
逆に、短いショート動画を1本ずつ作るような場面では、つなぐ手間のほうが大きくなることもあります。 どこまでを自社でやり、どこからを外に出すかは、採用動画の自作と外注の分け方の考え方がそのまま使えます。
費用はどのくらい?
当社の価格です。すべて税別で、交通費は実費のみ別途です。 AIを使う工程があっても、料金の考え方は変わりません。
- 5万円〜 — 撮影済み素材の編集、シンプルなショート動画
- 20万円〜 — 撮影から編集まで(ライトプラン)
- 35万円〜 — 会社紹介動画など(スタンダードプラン)
「撮りためた素材はあるけれど、編集に手が回らない」「AIを使いたいけれど、どこから手をつければいいか分からない」というご相談も受けています。 ぜひ一度お問い合わせください。費用の内訳は採用動画の費用相場で詳しく書いています。
よくある質問
Q. 無料版のDaVinci ResolveでもClaudeと連携できますか?
Blackmagic Designの発表では、AIアシスタントとの連携は有償版のDaVinci Resolve Studioの機能として案内されています。21.1から、外部からの高度なスクリプト操作もStudio版が必要になりました。2026年10月時点の情報です。
Q. AIで編集を自動化すれば、編集者はいらなくなりますか?
いまの時点では、いらなくなりません。文字起こしや無音の検出、カットの組み立て、音量合わせはAIに任せられますが、テロップの見た目や間の取り方、最終的な聴き心地の判断は人が行っています。減るのは、手を動かす時間です。
Q. 社外秘の話が入った素材を、AIに渡しても大丈夫ですか?
渡す前に、どのデータが社外に出るのかを確認してください。当社では文字起こしを手元のパソコンで行い、AIに渡すのは文字のデータだけにしています。使うAIサービスの契約プランによって、データの扱いが違う点にも注意が必要です。
まとめ: いちばん面倒な工程を、ひとつだけ書き出してみる
AIを入れるときは、ツールを選ぶより先に、いまの編集でいちばん時間を取られている工程を1つ書き出してみてください。 素材を見返す時間なのか、テロップを打つ時間なのか、音をそろえる時間なのか。そこが決まれば、どのツールをどうつなげばいいかが見えてきます。 当社でも、まさにその「面倒なところ」から一緒に考えています。お気軽にご相談ください。
文: 株式会社Atacama 代表取締役 阪口直哉(採用プラットフォーム出身。マーケティング・営業を経て映像制作へ)
AIを使った動画編集のご相談は、お気軽にどうぞ。
ご相談・お見積もりは無料です。まずはお気軽にどうぞ。
無料で相談する