COLUMN — 動画のBGM

動画のBGMと著作権。
企業の採用動画で確認すること

2026.10.06 / 株式会社Atacama

「この曲、うちの会社のイメージにぴったりだから使いたい」。 動画の打ち合わせで、いちばん楽しい話題のひとつがBGMです。 ただ、曲を選ぶ前に確かめたいことがあります。それは、その曲を使うのに、誰の許可が要るのかです。

市販の曲には、権利を持つ人が2系統います。作った人(作詞・作曲)と、録音した人(レコード会社・演奏者)です。 どちらの許可も取れない曲は、企業の動画には使えません。 この記事では、採用動画のBGMを選ぶときに確認したいことを、置き場所ごとに整理します。 法律の最終的な判断は、必要に応じて専門家や権利者に確認してください。

好きな曲を、会社の動画に使ってもいい?

市販の曲をそのまま使うのは、基本的にむずかしいと考えてください。 JASRAC(日本音楽著作権協会)の説明によると、市販のCDには、作詞家・作曲家の「著作権」と、 レコード製作者や実演家の「著作隣接権」が、別々に含まれています。 動画やネット配信で使うには、それぞれの権利者から許可を取る必要があります。

著作権著作隣接権(原盤の権利)
持っている人作詞家・作曲家、音楽出版社レコード会社(録音した人)、演奏者
守っているもの曲そのものその曲を録音した「音源」
許可の窓口JASRACなどの管理団体、または本人・出版社レコード会社など

ここで混乱しやすいのが、「JASRACに申請すれば使える」という思い込みです。 JASRACが窓口になるのは、主に左の「曲」の部分です。 企業の宣伝や広告に市販の音源を使う場合は、 レコード会社などへ、音源の許可を別に取ることが必要とされています。 採用動画は会社の宣伝にあたるので、この考え方が当てはまります。

クラシックなら大丈夫、と考える方もいます。作曲者の著作権が切れている曲は多いのですが、 演奏を録音した音源には、別の権利が残っていることがあります。 「古い曲だから自由」とは言い切れません。

「YouTubeなら大丈夫」「個人では問題なかった」は、企業にも当てはまる?

当てはまりません。ここは、いちばん誤解が多いところです。 個人の趣味の動画で曲が使えるのは、プラットフォーム側が権利者と結んでいる契約の範囲の話です。 会社の採用動画は商用利用なので、同じ前提では考えられません。 置き場所ごとに、気をつけたいことを整理しました。

置き場所BGMで気をつけたいこと
自社の採用サイト長く掲載するので、ライセンスの期間と「広告・宣伝での利用」が認められているかを確認する
YouTube権利者の申し立てで、公開停止・収益の対象外・差し替えになることがある。商用利用できる音源にしておく
Instagram・TikTokアプリ内の曲は、ビジネスアカウントだと使えないものがある。会社のアカウントで使えるかを確認する
合同説明会・展示会会場で流すのは「公開の場での再生」にあたる。素材のライセンスで、会場上映が含まれているかを見る

どの場合も、音源の「提供元」が、商用利用を認めているかを確かめるのが基本です。 SNS向けのショート動画の進め方は採用ショート動画の始め方にまとめています。

BGMの素材は、ライセンスのどこを見ればいい?

いま、企業が使いやすいのは、有料・無料のBGM素材サイトです。 選ぶときは、曲の雰囲気より先にライセンスの条件を読んでください。 見るところは、次の5つです。

  • 商用利用 — 企業の動画に使ってよいと書かれているか
  • 広告・宣伝での利用 — 「個人の動画のみ」「広告は別料金」になっていないか
  • 期間 — 買い切りか、1年ごとの更新か。更新なら、期限が切れたあとはどうなるか
  • 使える場所 — 自社サイト、SNS、会場上映のうち、どこまで認められているか
  • クレジット表記 — 動画や説明欄に曲名・作者名を載せる必要があるか

採用動画は、一度作ると何年も使います。 私たちは、期間の確認をいちばん大事にしています。 1年更新のライセンスは、見落としやすいからです。更新を忘れると、動画を下ろすことになります。 社員インタビューのBGMの選び方はインタビュー動画の編集でも触れています。

「著作権フリー」と書いてあれば、安心?

安心とは言い切れません。「著作権フリー」という言葉は、 たいてい「使用料を払わなくても使える」という意味で使われています。 ただ、使える範囲の条件は、素材ごとに別に決まっています。 「YouTubeは可、広告は不可」「クレジット表記が必須」といった条件がついている素材は、実際にあります。

もうひとつ、知っておいていただきたいことがあります。 フリー素材でも、同じ曲を別の人が別の場所に登録していると、YouTubeのシステムが誤って反応することがあります。 そのときに「この曲を使っていい」と示せる記録があると、話が早く進みます。

SunoなどAIで作ったBGMは、会社の動画に使っていい?

最近、AIで作ったBGMを使いたいというご相談が増えてきました。 Sunoのようなサービスは、「こんな雰囲気で、このくらいの長さで」と文章で伝えるだけで曲ができます。 素材サイトで何十曲も聴き比べるより、好みの曲に早くたどり着けることがあります。 採用動画のBGMとしても、とても便利な選択肢です。

ただし、使う前に確かめたいことが3つあります。

1つ目は、契約しているプランです。 Sunoは、無料プランで作った曲は商用利用ができず、権利もSuno側にあります。 企業の動画に使うなら有料プランが前提で、しかも無料のあいだに作った曲は、あとから有料にしても商用利用にはなりません。 さらに2026年9月3日に利用規約が変わり、商用利用できるのは「許可された回数のダウンロードで取得した曲」に限られるようになりました(Proは月20回、Premierは月60回)。 規約は変わるものなので、曲を作った日のプランと規約を、画面保存などで残しておくと安心です。 最新の内容はSunoの利用規約で確認してください。

2つ目は、既存の曲に似てしまうリスクです。 文化庁の整理では、AIで作ったものでも、既存の著作物に似ていて(類似性)、それに基づいて作られたと見られる場合(依拠性)は、著作権侵害になりえます。 特定のアーティスト名や曲名を指定して作るのは、依拠性が認められやすくなるので避けてください。 詳しくは文化庁「AIと著作権に関する考え方について」にまとまっています。 できあがった曲は、公開前に、社内の何人かに聴いてもらうだけでも、「どこかで聴いた曲」に気づけることがあります。

3つ目は、その曲を自社だけのものにしにくいことです。 AIが自動で作った曲は、法律上の「著作物」として認められにくいとされています。 同じような指示で、他社が似た曲を作って使っても、止めにくいということです。 会社の「音」として長く使いたい場合は、作曲家に依頼する方法もあります。

素材サイトAI作曲作曲家に依頼
好みに届く早さ聴き比べに時間がかかる早い打ち合わせから数回
権利の分かりやすさ規約が明確なものが多いプランと規約の確認が必須契約で決められる
自社だけの曲他社と重なる重なりやすい自社専用にできる

どれが正解というより、動画の置き場所と使う期間で選びます。 数か月のキャンペーン動画ならAI作曲、数年使う会社紹介動画なら権利の明確な素材か作曲、という分け方が現実的です。

公開したあとで困らないために、何を残しておく?

いちばんおすすめしたいのは、「どの曲を、どこで、どんな条件で使っているか」を1枚のメモにまとめておくことです。 採用の担当は、数年のうちに変わることがあります。 担当が変わったあとで「この曲は、いつまで使えるの?」となったとき、答えが探せるようにしておくためです。

メモに書くのは、曲名、購入・ダウンロードした日、素材サイトの名前、ライセンスの条件のページのURL、 期限がある場合はその日付、の5つです。AIで作った曲なら、作った日、プラン名、指示の文章(プロンプト)も加えてください。ライセンスのページは、あとで内容が変わることがあります。 購入した時点の画面を、スクリーンショットで保存しておくと安心です。 期限があるものは、カレンダーに入れておきましょう。

制作会社に頼むときは、何を聞けばいい?

動画の制作を外注するときは、次の2つを聞いてみてください。

ひとつは、BGMの出どころと、ライセンスの条件を教えてもらえるかです。 納品のときに、曲名と素材サイト、期間を教えてもらえれば、先ほどのメモがすぐ作れます。 もうひとつは、更新が必要なライセンスを使っているかです。 使っている場合は、更新の費用を誰が持つのかも、先に決めておくと安心です。

会社紹介動画の構成を決めるときも、BGMは早めに話題に出しておくのがおすすめです。 後から曲を差し替えると、映像のテンポまで変わってしまうことがあります。 構成の組み方は会社紹介動画の構成テンプレートを参考にしてください。

費用はどのくらい?

当社の価格です。すべて税別で、交通費は実費のみ別途です。 一般的な採用動画の相場は30万〜120万円(税別)ほどです。

  • 5万円〜 — 撮影済み素材の編集、シンプルなショート動画
  • 15万円〜 — 社員インタビュー+仕事風景(完成尺1〜2分、撮影2〜4時間)
  • 35万〜70万円 — 会社紹介動画(完成尺3〜6分、撮影3〜6時間)

BGMのライセンスや更新が気になる場合も、ぜひ一度お問い合わせください。 費用の内訳は採用動画の費用相場で詳しく書いています。

よくある質問

Q. 好きな曲を、会社の採用動画のBGMに使ってもいいですか?
市販の曲は、そのままでは使えません。曲には、作詞・作曲をした人の権利と、録音した会社や演奏者の権利があり、それぞれに許可が必要です。採用動画では、商用利用が認められた音源を選ぶのが現実的です。

Q. 「著作権フリー」と書かれたBGMなら、何に使っても大丈夫ですか?
大丈夫とは限りません。「著作権フリー」は、使用料がかからないという意味で使われることが多く、商用利用・広告利用・クレジット表記・期間などの条件が別に決まっています。使う前に、ライセンス条件を読んでください。

Q. YouTubeに上げる動画なら、市販の曲を使っても大丈夫ですか?
プラットフォームが結んでいる契約の範囲は、動画ごとの用途まで保証するものではありません。企業の採用動画のように商用で使う場合は、使う曲の権利者の許可を、自社で確認する前提で考えるのが安全です。

Q. AIで作ったBGMは、会社の動画に使えますか?
有料プランなど、商用利用が認められた条件であれば使えます。作った日のプランと規約を残し、既存の曲に似ていないかを公開前に確認してください。特定のアーティストや曲を指定して作るのは避けましょう。

まとめ: いま公開している動画のBGMを、1本分だけメモにする

まずは、いちばん新しい採用動画のBGMについて、曲名・入手先・期限の3つを書き出してみてください。 すぐに答えられれば安心です。分からないものがあれば、そこが次に確認するところです。 まだ動画を作っていない場合は、BGMの条件も含めて、社員インタビュー動画の作り方とあわせて進めてみてください。

文: 株式会社Atacama 代表取締役 阪口直哉(採用プラットフォーム出身。マーケティング・営業を経て映像制作へ)

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