COLUMN — AI×動画制作

SunoでBGMを作るなら、
声の居場所を空ける。
参考動画を測って分かった指定の型

2026.10.31 / 株式会社Atacama

アウトドアイベントの告知動画で、BGMをAI作曲サービスのSunoで作ることになりました。 最初は「秋らしい、ゆったりしたアコースティック」と雰囲気で指定して、何パターンか作りました。 ところが聴いてみると、「チルすぎる。もっとこの動画みたいな感じがいい」となり、お手本の動画を1本決めることになりました。

そこで、お手本の動画の音を数字で測ってみました。 分かったのは、お手本のBGMは、曲だけで聴くとかなり地味だったということです。 動画の勢いを作っていたのはナレーションとカット割りで、音楽は声の邪魔をしない場所に下がっていました。 ナレーションの入る動画のBGMは、曲の良さより先に「声の居場所を空けておくこと」で決まります。

この記事では、そのとき測った数字と、それをSunoへの指定の文章(プロンプト)に置き換えた型、会社の動画に使うときの規約の条件をまとめます。 少し専門的な話も入りますが、なるべく分かりやすく書きます。

Sunoは、ナレーション入りの動画に向いている?

Sunoは、曲の雰囲気を文章で伝えると、短い時間で歌入りの曲まで作ってくれるサービスです。 当社でも「AIでBGMを作りたい」というご相談が増えていて、素材サイトで何十曲も聴き比べるより、好みの方向に早くたどり着けると感じています。

ただ、Sunoは放っておくと「1曲として聴いて気持ちいい曲」を作ってきます。 イントロで盛り上げ、サビで歌が入り、最後はフェードアウトする、という作りです。 曲だけで聴くと完成度は高いのですが、その上に日本語のナレーションを乗せると、歌と声がぶつかって、どちらも聞き取りにくくなります。 ナレーション入りの動画に使うなら、「いい曲」ではなく「声の下に敷く曲」として指定し直す必要があります。

お手本の動画を測ると、何が分かった?

お手本の動画(約2分)の音声を、AI(Claude)に解析させて、ナレーションとBGMの関係を数字にしました。 耳で聴いた印象ではなく、数字で比べるのがポイントです。

測ったこと結果読み取れること
ナレーションの入り方0秒から122秒まで、16の文が途切れず続く(切れ目は1〜2秒)BGMが前に出る時間がほぼない
BGMの音量全体より約14dB低いかなり絞って入れている
高い音(9kHz以上)−62.8dBで、ほぼ無音シェイカー・鈴・ハイハットのようなシャカシャカした音が入っていない
音の重心120Hz以下がいちばん強く、高くなるほど急に弱くなるベースやキックなど低い音が中心
盛り上がりの幅(LRA)4.5 LU2分間ほぼ同じ調子。盛り上がりもフェードもない
左右の広がり左右の差の成分が23dB低いほぼモノラル。音が真ん中に集まっている

dB(デシベル)は音の大きさの差を表す単位で、数字が大きいほど差が大きいという意味です。 LRAは、1本の動画の中で音の大きさがどれくらい上下するかを表す数字で、小さいほど起伏が少なくなります。

この結果から、お手本のBGMは「低い音に寄せて、高い音を空けて、ずっと同じ調子で小さく鳴っている」と分かりました。 人の声の聞き取りやすさに関わる音の高さは、一般に数百Hzから4kHzあたりと言われます。 さらに、サ行のような子音のシャカシャカした成分はもっと高いところに出ます。 お手本は、その両方をBGMが邪魔しないように作られていたのです。

最初に「チルすぎる」と言われたのは、曲だけを聴いたときの印象でした。 ナレーションを全編に乗せる動画なら、むしろこの地味さが正解です。 テロップの自動生成の記事でも、お手本と並べて文字の大きさを測ったら6割しかなかった、という話を書きました。 音でも同じで、「なんとなく似ている」ではなく、測ってから作ると、やり直しが減ります。

測った数字を、Sunoの指定にどう置き換える?

Sunoには、曲の雰囲気を書く欄(Style of Music)と、歌詞や曲の構成を書く欄(Lyrics)があります。 測った数字を、楽器の選び方と構成の指示に置き換えて書きました。実際に使った指定はこちらです。

warm instrumental bed for a voiceover, around 140 BPM with a relaxed half-time feel, round deep electric bass carrying the main line, muted low electric guitar, soft Rhodes chords sitting in the low midrange, simple dry drum kit with a soft kick and rim clicks, no hi-hats, no shaker, no tambourine, no bells, no glockenspiel, almost no content above 8kHz, dark warm and slightly vintage, autumn afternoon, steady and even from the very first bar, no intro build, no drop, no breakdown, the same energy for the entire track, fully instrumental

日本語にすると、「ナレーションの下に敷く歌なしの曲。低いベースが主役で、ギターや鍵盤も低めに。ハイハット・シャカシャカ・鈴は入れない。最初から最後まで同じ調子で、盛り上げも落としもしない」という指定です。 表の数字との対応は、次のとおりです。

測った結果Sunoへの書き方
9kHz以上がほぼ無音no hi-hats, no shaker, no bells など、高い音の楽器を名前で外す
重心が低いdeep electric bass, low midrange など、低い楽器と音域を指定する
起伏がない(LRA 4.5)no intro build, no drop, the same energy for the entire track
ナレーションが全編fully instrumental。歌詞の欄は [Instrumental] だけにし、歌なしの設定もオンにする

テンポは、測った打点の間隔(0.40〜0.47秒)から、速い曲とも遅い曲とも読める結果になりました。 そこで「140前後で、ゆったりしたノリ」と、どちらに転んでも近くなる書き方にしています。 また、Sunoは指定にアーティスト名を書くと受け付けないことがあります。権利の面でも避けたいので、楽器と雰囲気だけで指定しています。

書き方を変えても、Sunoが指定どおりに作ってくれるとは限りません。 そのため、1つの指定で2〜3曲作り、ナレーションの仮の録音を重ねてから選ぶようにしています。 曲だけで聴くと、どれも物足りなく感じるはずです。ナレーションの下に敷く曲としては、それで正しいと考えています。

広告のように短い動画なら、何を変える?

同じイベントで、SNS広告用の15〜60秒の動画も作ることになり、BGMの指定を組み直しました。 短い広告では、ナレーションの下に敷く曲とは逆に、頭の1秒目から鳴っていることと最後にピタッと止まることが大事になります。 スクロールで流れていく画面では、イントロを待ってもらえないからです。

構成の指定は「0秒目から一番目立つフレーズ → 真ん中は楽器を減らしてナレーション用に空ける → 最後にもう一度盛り上げて、フェードせずに一発で止める」の3段にしました。 歌詞の欄に [Hook - starts at 0:00, no intro] [Instrumental - sparse bed, for narration] [Outro - one clean hit and stop, no fade] のように、場面ごとの役割を書いておきます。

それでも、頭に短い助走が付いたり、最後がフェードアウトしたりする曲は出てきます。 頭は編集で切る前提にして、フェードアウトで終わる曲は使わない、と決めておくと選ぶのが速くなります。 日付や場所を出す最後のカットで音が消えかけていると、締まらないからです。 また、15秒版は60秒版を切り詰めるより、同じ雰囲気の指定で15秒用に別に作るほうが締まりやすいと考えて、別に作っています。 短い動画の構成の考え方は30秒の会社紹介動画にまとめています。

手間を減らすには、どうつなぐ?

AIで曲を作れることは、もう多くの方がご存じだと思います。 面倒なのは、作った曲が動画に合うかを確かめて、合わなければ作り直す、その往復です。 当社では、次の順番でつないで、往復を減らしています。

順番やること使うもの
1「この動画みたいに」というお手本を1本決めるお客様とのやりとり
2お手本の音を数字で測る(音量差・高い音・起伏・左右の広がり)AI(Claude)による音声の解析
3測った数字を、楽器と構成の指定に置き換えるAI(Claude)で指定文を作る
41つの指定で2〜3曲作るSuno(有料プラン)
5ナレーションに重ね、BGMを12〜14dB下げて選ぶDaVinci Resolve

いちばん効いているのは2と3です。 「もう少し明るく」「もっと落ち着いて」という言葉のやりとりは、人によって受け取り方がずれます。 お手本を測って数字にしておくと、指定が具体的になり、選ぶときの基準もはっきりします。 BGMの音量の決め方はインタビュー動画の編集でも書いていますし、編集の自動化全体はDaVinci Resolve×Claudeで動画編集を自動化にまとめています。

会社の動画に使うとき、規約と権利で気をつけることは?

Sunoの利用規約は、2026年8月10日に改定され、9月3日から新しい内容になっています。 Sunoの利用規約を読んだ範囲で、会社の動画に関わるところをまとめます(2026年10月時点)。

項目内容
無料プラン個人的・非商用の利用に限られる。会社の動画には使えない
有料プラン(Pro・Premier)Sunoの正規の方法でダウンロードした曲は、商用で使える。ダウンロードしていない曲は商用で使えない
ダウンロードできる数プランごとに月の上限がある。ダウンロード済みの曲の権利は、その後に上限を使い切っても続く
著作権Suno側の権利は利用者に移るが、著作権が成立することまでは保証していない
リミックスどのプランでも、商用には使えない

歌と演奏を分ける「Get Stems」という機能も、Sunoのヘルプによると有料プランだけの機能です。 また、無料プランで作った曲を、あとから有料プランにして商用で使えるかどうかは、規約の文面からははっきりしません。 会社の動画に使う曲は、最初から有料プランで作り、ダウンロードしておくのが安全です。

AIで作った曲でも、既存の曲に似ていて、それをもとに作られたと見られる場合は、著作権の侵害になりえます。 この考え方は、文化庁の「AIと著作権」のページで整理されています。 当社では、作った日・プラン名・指定の文章・ダウンロードした日を、案件ごとに記録しています。 Sunoに音声を読み込ませる機能を使う場合は、社員の方の声など、使ってよいと確認できた音声だけにしてください。 BGMの権利全体の話は、動画のBGMと著作権で詳しく書いています。

費用はどのくらい?

当社の価格です。すべて税別で、交通費は実費のみ別途いただきます。 AIでBGMを作る場合も、料金の考え方は変わりません。

  • 5万円〜 — 撮影済みの素材の編集、シンプルなショート動画
  • 20万円〜 — 撮影から編集まで(ライトプラン)
  • 35万円〜 — 会社紹介動画など(スタンダードプラン)

「AIで曲を作ってみたけれど、動画に合わせるとしっくりこない」「お手本はあるけれど、どう伝えればいいか分からない」といったご相談もいただいています。 ぜひ一度お問い合わせください。費用の内訳は採用動画の費用相場で詳しく書いています。

よくある質問

Q. Sunoの無料プランで作った曲を、会社の動画に使えますか?
使えません。2026年9月3日施行のSunoの利用規約では、無料プランで作った曲は個人的・非商用の利用に限られています。会社の動画に使うなら、有料プラン(Pro・Premier)で作り、Sunoの正規の方法でダウンロードした曲を使ってください。

Q. 歌入りでできた曲から、歌だけを消せますか?
有料プランなら、Sunoの「Get Stems」という機能で歌と演奏を分けられます(2026年10月時点)。ただ、最初から「歌なし(Instrumental)」で作るほうが、ナレーションの下に敷く曲としては扱いやすいです。

Q. ナレーションの下のBGMは、どれくらいの音量にすればいいですか?
当社が測った参考動画では、BGMが全体より約14dB低く入っていました。Sunoで作った曲をそのまま乗せると大きすぎることが多いので、ナレーションより12〜14dBほど下げたところから、実際に声を重ねて調整するのがおすすめです。

まとめ: 曲を作る前に、お手本の音を測る

SunoでナレーションつきのBGMを作るなら、指定の文章を工夫する前に、「この動画みたいに」というお手本を1本決めて、その音を測ってみてください。 BGMがどれくらい小さく、どの高さの音が空いているかが分かれば、Sunoへの指定も、できた曲の選び方もはっきりします。 当社でも、このお手本選びから一緒に考えています。お気軽にご相談ください。

文: 株式会社Atacama 代表取締役 阪口直哉(採用プラットフォーム出身。マーケティング・営業を経て映像制作へ)

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